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カバン屋の読書魔時代の“キーコインポーチ”

迷い多き20代。私は社会人入試で受かった専門学校を休学し、フリーター生活を送っていました。
バイトをしていたのは原宿・キャットストリートにある、made in USAが売りのカバン屋(今は移転しました)。路面店で、普段はスタッフ3人ほどでお店を回していました。

大学生の頃まではファッションを仕事にしたいくらい服が好きでしたが、親ブロックの影響などもあってその後は仕事にしようというほどの情熱はなくなり、特にアパレル畑出身でもない私がなぜかカバン屋へ。ナイロンのリュックサックやボディバッグなど、シンプルで流行り廃りのない見た目と、女性が持っても男性が持ってもいい感じがなんだか好きだなと思い、応募したような気がします。

このキーコインポーチはその名の通り、鍵と交通系ICカード、小銭などのちょっとした小物が入るようなポケットが付いている仕様になっています。今、私が入れているのは家の鍵と自転車の鍵、交通系ICカード、USB、リップクリーム、目薬、絆創膏。小銭は入れていませんが、小さいながらにカバンの中ではそれなりに主張するので、鍵をなくさずに済んでいます。

カラーは色々あったのですが、「洋服なら絶対選ばない色・柄にしよう」と思って豹柄にしました。ちなみに予想通り30代になった今も、豹柄の服は持っていません。ゼブラ柄もあったのですが、ゼブラは白が汚れるかなと思って辞めたのかな、きっと。ポーチ表面にはロゴマークのタグがついていたのですが、ないほうがかわいいと思って糸切ばさみでプチプチと切って外してしまいました。

思えばこのバイトは今の私の仕事の原点となった場所でもあります。それは「店舗ブログ」。当時、立ち仕事に慣れていなかったこともあり、暇な平日はとにかく座りたいというのが正直な気持ちでした。死ぬほど忙しいこともなく、店長も優しかったのでゆるりと過ごしていましたが、パソコン作業をする部屋にいれば座れるというのをいいことに、私は率先して店舗ブログを執筆。撮影して、文章を考えて、オンラインストアと連携し、週1で投稿するという作業を繰り返していました。

勤めていたのは1年ちょっとだった気がしますが、一定の期間続けたあと、オンラインストアの売り上げがかなり伸びたというのを本社の人から聞いて嬉しかったのを覚えています。今でいうコンテンツマーケティングの走りかもしれません。「座りたい」という気持ちから書いていたブログが売り上げに貢献するとは、何事も一生懸命やるべき方向性をちょっと引いて考えた方がいい、ということに通じるような気もしますね。

しかしこのバイト、駅近ではない路面店はどこもそうかもしれませんが、平日(特に天候が悪い日)は暇でした。ディスプレイを変えて、ブログも書いて、掃除もして、、それでも何もやることがなくなる時もあるんです。1人ならまだしも、スタッフが複数名いるので当たり前といえば当たり前ですね。そんなとき私は決まって本を読んでいました(特に怒られなかった)。

ある日は柱の影に隠れて、また別の日はストックルームで読書。私は幼少から読書量が多かったせいか本を読むスピードがとても速く、暇な日は3冊、1冊しか読めない日は「今日は忙しかったなぁ」と言って、当時友人に苦笑された記憶があります。
ひとつ覚えているのは、中古で買ったマイケル・サンデルの「これからの『正義』の話をしよう」の表紙を開いたら、「社長からのプレゼントです」という付箋が貼ってあったこと。他にどんな本を読んでいたか内容はほとんど忘れてしまいましたが、当時私はとてもお金がなく、貧困をテーマにした本をよく読んでいて、社員さんに「暗い趣味ですね」とちょっと引き気味に言われたのを覚えています。

その後、私は店舗ブログの成功体験をもとに「書くことで人に喜んでもらえるし、自分も苦にならないし、好きなことより得意なことを活かして仕事をしたほうがいいのではないか」と思い、Webライターに転身し、編集→コンテンツマーケティング担当→広報になり、今に至ります。きっとあのときの読書体験も活きているはずで、不真面目な読書魔バイトを見守ってくださったみなさま、ありがとうございました。

ちなみに話は逸れますが、本をはじめAmazonで買い物をしている方、昔の購入履歴を辿ると自分の興味関心が辿れて面白いですよ。社長からのプレゼントを中古で売ってしまった方、私が代わりに有り難く読ませていただきました。中古本はこれだからおもしろいですね。

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オーナー

金田悠/YU KANETA

本サイトの管理人。北海道旭川市出身、横浜在住。多様性のあるやさしい社会を目指して、フリーランスの広報PR・ライターとして活動中。マイブームはメダカの観察とサンリオピューロランド。
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