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極貧バイト時代に買った“桐の米びつ”

突然ですが、皆さんはお米を何に入れていて保存しているでしょうか。私は「桐の米びつ」に入れています。見ていただいた通り、私のずさんさのせいなのか多少のシミはあるのですが、10年以上経った今も現役で使えています。たぶん、買ったのは2011-2012年くらい。足が丸っこいのがかわいらしいです。

私は今のワークスタイルに行き着くまでかなりの紆余曲折がありまして、新卒で入った会社を退職後、海外留学を経て帰国し、数年間とても収入の少ないバイト生活を送っていました。最初の会社が会社都合での退職だったため、ある程度まとまった退職金があり、学生時代もお金にあまり困ったことがなかったというのが完全に裏目に出て、当時の私のお金の使い方はめちゃくちゃ。といっても豪遊したりするわけではなく、どちらかというと悩まされたのはお金というよりも「孤独」と「焦り」だった気がします。そんなときに私を慰めてくれたのが「モノ」だったのでした。

ブランド物やホストクラブ通いに走らなかったのは幸いで、私が目をつけたのは「生活雑貨」。同僚は皆、私の収入をうっすら知っているので、分不相応の買い物をしていることを雑談で知り、目が点になっていました。もう当時の価格は忘れてしまいましたが、今この10kgタイプが7000円程度で販売されているようなので、5000円くらいはしたのではないかと思います。
時給1000円以下のバイトにとっては、日給くらいしますからね。それで都内で一人暮らししていたので、「米は他の入れ物でもいいし、将来のために貯金しよう」というタイプだったら絶対に買わなかったでしょう。

この米びつを買ったとき、バイト先の社員の方に言われて覚えているのが、
「私にはわからないけれど、今のあなたがそれを買うことで得られる豊かさもあるのでしょうね」という言葉。

そうなんです。いわゆるブランド品やデザイナー品、価値が認められている素材を使っているなど、他人が定めた物差しがない限り、所有するモノの価値は人にはわからない。買い物依存症のように、買って満足して使わずに詰んでおくようであればそれは問題だと思いますが、この米びつを見て「好きだな」「ほっこりするな」「足が丸くてかわいい」「こいつのおかげで米ウマイ」とか考えていれば、自宅で気晴らしをせざるを得ない環境でも得られる娯楽としてその費用対効果はかなり高いのではないかと思います。そして、十分な収入がある状態でこの米びつを買ったとて、同じようにそう感じるかはわからない。

結果、私とともに幾度の引っ越しを繰り返し、結婚した今も現役で使っています。きっとこれも他の人が見たら「うす汚れた桐の米びつ」になってしまうと思うのですけれど、この米びつが「自分にしかわからない豊かさ」を教えてくれたことを思い出しました。

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金田悠/YU KANETA

本サイトの管理人。北海道旭川市出身、横浜在住。多様性のあるやさしい社会を目指して、フリーランスの広報PR・ライターとして活動中。マイブームはメダカの観察。
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